終わらない話 育てる作品その2

ついに雪が降りましたね。嬉しいのはなぜでしょう。前回は苔を育成する話でしたが、今回は芝の育成です。このようなアートをプロセスアートといいドイツのコンセプチャルアーティストのハンス・ハーケの1960年代の初期作品にも見られます。

ことの始まりは9月の記録的な豪雨で11日に、ホッパー内が全て浸水しました。展覧会ができるのか?想定を超える浸水に一同愕然としました。気を取り直し内部に貯まった泥を掻きだして土嚢を作りましたが絶対量には遠く及びませんでした。次の週に幾春別連合町内会会長の富樫良一さんが無償でブルとダンプで土嚢用の土を運んでくれたのがプロセスアートの始まりです。遅々として進まぬ作品作りの中、一同ハンデをものともせず笑顔で土嚢をつくり周囲に並べました。余った土を富樫さんと皆の想いをつなぐプロセスアートに思い立ち上遠野が作品にしました。土はズリ山から取った赤ズリ(ズリ山が体積した自重で自然発火して内部の岩石が赤く焼成したもの)と判明。ズリ山の位相ととらえて、自然に草木が生えていくズリ山の現状や、自然を征服し頂点に君臨するピラミッドの思想ではなく、草木が生えて自然に埋没していく古墳が日本人の優れた自然感であることを元にしています。NPO炭鉱の記憶推進事業団事務局長の酒井裕司さんはランドスケープアークテクチャーの専門家であるため、芝の種播きを丁寧に指導してくれました。何気ない土の小さな山が、人と人をつなぐプロセスや自然の循環のプロセスを見せてくれました。芝の種を蒔いた当初と会期終了後の11月11日の状況を比べてください。芝が青々と若芽も鮮やかに、周囲の落葉も進み裏山のポッパーの構造物も見せて自然や産業遺産のプロセスも同期させる作品となりました。今頃、雪とどのようなプロセスを描いているのでしょうか?

上遠野敏(アートプロデューサー)