私が経験したこと。音が繋ぐ、石炭と私(2)

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炭鉱遺産施設を活用したアート・プロジェクトに携わることになった私。

ただ今になって、間接的には音楽を通じて、炭鉱文化とのかかわりをもっていた自分を再発見しました。こんなところでも過去の記録と記憶が繋がるものかという思いにふけっているところです。

最初のきっかけは 三橋達也の歌う‘炭坑節‘。。ではなく、英国のロック系アート・グループ、”テスト・デプト(Test Dept.)”による、金属音を強調させたノイズのサンプリングとドラム缶などの打楽器をふんだんに使った、リズミカルでダンサブルな音との出会いでした。
炭鉱労働組合によるストライキをサポートする大規模なイベントを開催したりという、政治的メッセージ色の強い団体として有名でしたが、純粋に音楽、視覚的なものに興味をもち彼等の活動に親しんでいました。
活動の場所がロンドンの金融街シティにあるキャノン・ストリート駅構内だったり、今でいうサイト・スペシフィックな(アート?)パフォーマンス活動を展開。
20代前半のメンバーには炭鉱出身者も音楽を勉強していた者もなく、美術学校ゴールド・スミス・カレッジの演劇学科、セントマーチンの映画学科の学生等が中心メンバーとなるアート系の若者の集まりで、レコードやカセットという記録媒体、音楽レーベルからの情報発信という行為から、ロック系というジャンルに分類されていましたが、1984年に発売した象徴的なレコード、南ウェールズの炭坑夫男性合唱団との共演、組合代表の演説録音などを集めた‘SHOULDER TO SHOULDER’ の売上利益は、全てストライキ活動への援助金として寄附されるという慈善奉仕事業団体でもあったのでした。
ただ、それでも私は思想的なこと云々を抜きにレコード・カバーやPVのデザインに惹かれたりで、レコードを購入していた記憶が新たに甦っていました。

それにしても、今みても素晴らしいデザインかと。。

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LP ’Shoulder To Shoulder’
音に興味をもたれた方は https://www.youtube.com/watch?v=sE86ZcwUays から

奇遇にも今年、英国は炭鉱労働組合による最大のストライキがあった1984年から30年目ということで様々な行事があり、長い間活動を休止していたこのグループも一時的に再結成され、ニュー・キャスルのAVフェステバルで大規模な野外サウンド・インスタレーションを発表。
観客動員数、メディアにおいても高い評価を受け、アート・グループとして甦っていたのです。

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写真: Zen Icknow/Corbis

30年目を記念して公開された炭鉱労働組合による1984年ストライキのドキュメンタリー映画 Still The Enemy Within(公式サイトthe-enemy-within.org.uk)でも彼等の活動は紹介され、同映画のサウンド・トラックも担当。
10月にはドイツ、エッセンの世界遺産ツォルフェライン炭鉱で開催された1914年という第一次世界大戦の始まりに焦点を合わせたセミナーと展示会に招聘され、来年の3月には過去のヴィジュアル作品、コンサートの写真、マニュフェスト、テキスト等をまとめた図録集の出版、30年経って、過去の活動が見直されている様子でした。

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映画の広告ポスター(石炭とバッチというデザイン)

この彼等のリバイバルに一役買い、採収(Extraction) 石炭などのエネルギー原料を今年のテーマに選んだ現AVフェステバルの若き芸術監督レベッカ・シャトウェルが 偶然にも札幌まで遊びにくることになり、3日間という短い滞在中、無理矢理、空知でのアート・プロジェクト、三笠プロジェクトに案内することができました。
空知の炭鉱跡訪問後、テスト・デプトを絡めた何かプロジェクトができないかとの打診を受け、何ができるのかわかりませんが、これを機に空知とイギリスの北東地方か南ウェールズが繋がらないかと思いを巡らせ、私と炭鉱、縁のある2014年でありました。

ちなみに、このドキュメンタリー映画とは別に、1984年の南ウェールズの炭鉱町における実話を元にしたコメディ映画 ’Pride’ (公式サイトwww.pridemovie.co.uk)の公開もあったりしてます。こちらは商業映画なので夕張映画祭での上映などいかがなものかと。

最後に ルール・トリエンナーレの創立者、初代芸術監督で 保守的な欧州の演劇、オペラ界に現代美術を取り入れるなど新しい芸術のあり方を提示し続けた偉大なるジェラルド・モルティエ総裁が、今年の3月9日70歳でお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りします。

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モルティエ委託代表作 2点を写真で紹介

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1999年ラ・フラ・デルス・バウスのザルツブルグ音楽祭初演出作品
オペラ、‘ファウストの劫罰’ 2004年ルール・トリエンナーレ会場ボーフムにて

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オペラ・バスティーユ20周年記念作品
アンゼルム・キーファー舞台美術担当イェルク・ヴィトマンのオペラEntitled Am Anfang
2009年パリ

モルティエの影響が窺われる近年開催された野外オペラなどの実例

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2014年9月 スエーデン最北端地域にあるウメオ市(人口約8万)の旧軍事基地跡にて
ラ・フラ・デルス・バウス演出のストラウスのオペラ、エレクトラ

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2012年9月 デヴィッド・トゥープの ドラ・マールを主役としたオペラSTAR-SHAPED BISCUIT
英国オールドバラ(総人口約3千人弱)旧ビール工場跡地にて

吉田敬子(アートマネジメントメンバー)