奔別・アートマネジメント講座2年生として

nakatani

今回炭鉱の記憶アートプロジェクトとして初めての2会場開催となり、奔別会場としては3期連続となる開催。
今年は作品数を絞り、このプロジェクトの大きな要素である炭鉱遺産が持つ「場」のスケールを生かした設えとなりました。

準備段階から、今年も地元幾春別の若者や連合町内の方々に大変なご協力を頂き、会期中にも様々な場面でお手伝いいただきました。
このプロジェクトの特徴である、地元の方々との「絆」は、今年も更に強いものとなりました。

ホッパー1階の岡部昌生氏は、「札幌国際芸術祭」出品のさなかに約1ヵ月間にわたり滞在制作した「そらち炭鉱の記憶 -旧住友奔別炭鉱選炭施設石炭積み出しホッパー遺構1928-1971-2003 1929-1987」と題したフロッタージュ作品を出展して頂きました。

岡部氏ワークショプ

奔別炭鉱ホッパー最大の特徴である100mの引込線路あとには、右に1991年に制作された真っ赤な「オビヒロ・マトリックス」、左面には黒を基調とした「そらち(幾春別)炭鉱の記憶」が、廃墟となってしまった静寂な空間に互いを主張するかのように対峙し、その存在感を見せつけていました。

岡部氏ガイド

2階はプロジェクトリーダーである上遠野敏氏「モスモス-黄金郷-」、人の手で移植されたとは思えないほど「場」に溶け込んでいたモスモス(苔)たちは、まさにインダストリアルネイチャー(産業自然)そのもの。傷みの激しくなった産業資産をゆっくりと侵食してゆく自然が印象的な作品でした。

屋外展示は坂巻正美氏の「奔別礦渡友子交際所馬頭世音奉」と中渓宏一氏の「森かえる」の2作品。
坂巻氏は昨年流れをくむ鉱山・炭鉱に伝わっていた友子制度をテーマとした作品で、馬頭観世音碑の拓本が荘厳な空間を生み、嘗て此処にあったであろう文化に想いを巡らせる作品でした。

対して中渓氏のテーマは「自然とエネルギー」。戦後の日本のエネルギーを生み出していた場所で考える21世紀型の暮らしを、会期中自らがそこで生活することで表現してゆく作品は、受け手側に未来のエネルギー問題を考えさせるパフォーマンスでした。

2F

アートマネジメント講座2年生としては、昨年勉強させて頂いた事を基にただの作品保安員ではなく、来場者へ作品の説明ができるガイドとなれるよう心掛けました。

このアート展示に来場される方は、現代アート好き・炭鉱遺産マニア・写真愛好家・地元所縁・観光立ち寄り等、ある程度分類することができ、それぞれ目的も興味の深度も異なっています。

初めの頃は一目で判断するのは難しかったのですが、目的を持って観察するうち、年齢や服装からある程度判断できるようになりました。
ガイドとしては、アートを目的としてきた人には作品の説明を中心に、炭鉱遺産を見に来た人にはこの場所の説明や施設の説明を中心に、地元所縁や観光立ち寄りの人にはこのプロジェクトの目的や意義を伝えるように話す内容を変えるように心がけました。

1F

特に印象的だったのは、岡部氏の作品はファーストインパクトでは岡部ファン以外理解不能ですが、作品説明と作者の意図を伝えると一変して食い入るように観察し、再度入り口側から観覧し直される方が多く見られました。
上遠野氏の作品は、一見しては作品である事すら解らないほど風景に溶け込んでいます。
見学される方には、先ず何も伝えずに「場」の持つ圧倒的な空間を感じてもらい、その後に作品の説明、更にそこからは見ることができない、苔のあるコンクリート梁下ホッパー内部の様子を伝え、作者の意図とする部分を解説するようにしました。

どの場面においても、決して見学者の邪魔をしてはいけないという事を心がけました。
過度なガイドは雑音でしかなく、ピント外れの解説も苦痛でしかなくなると思います。
自然な形で会話を進めていたら、あっという間に5分10分と話し込む事もしばしばでした。

大橋二朗(アートマネジメントメンバー)